「“ゲーム”は終わり方を考えている」コロプラ創業者・馬場氏が考える『Brilliantcrypto』の真の価値とは──ブロックチェーンゲームに未来はあるのか | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)

「“ゲーム”は終わり方を考えている」コロプラ創業者・馬場氏が考える『Brilliantcrypto』の真の価値とは──ブロックチェーンゲームに未来はあるのか

デジタルの宝石を採掘し、加工し、取引するブロックチェーンゲーム『Brilliantcrypto』は6月に1周年を迎えた。1周年を記念して、ゲーム内の新たな採掘エリア、リージョン2「Southeastern Tanzania(南東タンザニア)」も公開された。

ゲーム大手コロプラの子会社で、「持続可能なPlay to Earn」を掲げるBrilliantcrypto社が手がけるこのゲームは、デジタル世界に価値ある宝石を生み出し、メタバース空間にデジタルジュエリー産業を生み出すことを目指している。

今、日本のブロックチェーンゲーム(BCG)は、Web3マスアダプションの牽引役と期待されつつも、厳しい状況が続いている。BCGの問題点はどこにあるのか? ブレイクのポイントはあるのか?

『Brilliantcrypto』の現状やブロックチェーンゲームを取り巻く環境について、コロプラ創業者で、Brilliantcrypto代表取締役の馬場功淳氏にインタビュー。新たな採掘エリアをリリースしたばかりで、勢いを感じさせる話が聞けるかと思いきや、馬場氏からは「終わり方を考えている」というショッキングな言葉が飛び出した。

「ゲーム運用のフィナーレを迎えてこそ、このプロジェクトは輝きを放ちはじめる」「宝石の価値に多くの人が気づくのは、5年後または10年後かもしれない」と語る馬場氏の真意はどこにあるのか?

海外上場のハードル、才能豊かなユーザー

〈ユーザーが加工したさまざまなデジタルジュエリー、7月時点で鉱山から掘り出された宝石は200万個を超える、提供:Brilliantcrypto〉──リリースからの1年あまりをどのように評価しているのか。

馬場氏:ここまで漕ぎつけたことがすごいことではないかと思っている。当社は上場企業の子会社で、暗号資産を使うプロジェクトの会計基準も決まってないなか、当社も一緒になって考え、何とか決めていただいた。またIEOも業界団体や規制当局の審査を受け、正攻法で実施できた。これは、ある意味、快挙だったと思う。上場企業の子会社でここまでやったのは、おそらく当社が世界初ではないか。

IEOした暗号資産BRILは価格がつき、プロジェクトは無事スタートした。当初は「本当に宝石を掘ってくれるのか」「ユーザーが5人ぐらいだったらどうしよう」と不安もあったが、たくさんのユーザーに来ていただいた。そして1年経っても、ユーザーは掘ってくれている。

ユーザーの動向は “超活発” とは言えないが、当初の想定以上の数字を保っている。先日、2つめのリージョンもリリースできたし、数カ月前には掘り出した宝石を加工する機能もリリースできた。この1年、頑張れたというのが正直な感想だ。

──BRILは海外の複数の取引所にも上場している。想定外のことや難しいことはあったか。

馬場氏:上場企業として監査法人とのやりとりは、日本でのIEO時から大変な作業だったが、海外上場でも監査法人は法的根拠を求めている。海外上場については「どこまで調べるのか」が大きな課題となった。日本でのIEO時には全部つぶさに調べて「もうこれ以上調べられない」ほどだったが、海外も毎回すべて同じように行うのか。どこまで調査して、調査内容をどのように担保するかを監査法人と協議しながら進めることは非常に大変な作業だった。

──監査法人にとっても、海外取引所の調査は初めてのケースになる。

馬場氏:監査法人からは「調査できない」と言われた。なので、我々が調査して、その結果を提出し、「ここまで調べたのだから大丈夫」と合意していった。海外取引所との交渉自体は、ある意味、通常のビジネス交渉なので、それほど苦労はなかったが、先方は「合法」と言うものの、我々が調べると「ちょっと怪しいかも」というケースも少なくなかった。捉え方によってまったく変わってしまう。現地の法律は、現地の人でないとわからないこともあり、実態がどうなのかが重要となる。調査して諦めたケースもあった。

──グローバルで評判が良くても、実際にビジネスを行うとなると難しいケースもあったのか。

馬場氏:ほとんどが難しいと思っていただいて良いだろう。もちろん我々の要求には強弱があって、上場するだけなのか、広告も行うかなど、場合によって違ってくる。社内で複数の項目でランク付けを行ったが、すべてクリアできたところはほとんどなかった。

──今、フェーズ2に入り、ジュエリーの加工が可能になって、新たな発見などはあったのか。

馬場氏:UGC(ユーザー生成コンテンツ)機能を作ると、機能を作ると、やはり才能豊かなユーザーさんが大勢いることがわかる。「このツールで、これほどきれいなジュエリーをよく作れるものだ」と感心してしまうほど。世の中の才能はすごい。当初、加工機能は難しすぎるのではないかと思っていたが、我々の想定以上に使いこなし、ユニークなデザインのジュエリーができあがっている。

さらにその先ではメタバース空間にジュエリーを持ち込むことを計画している。だが正直なところ、フェーズ3となるメタバース空間での展開は我々でなくてもできる。メタバース空間にジュエリーをインポートできれば良い。

〈運営側の想像を超えたデジタルジュエリーが生まれている。過去最高の取引金額は581,000円、提供:Brilliantcrypto〉## ブロックチェーンゲームを取り巻く4つの課題

──サービスは順調なようだが、IEOで発行したブリリアンクリプトトークン(BRIL)の価格推移は芳しくない状況が続いている。

馬場氏:他のゲームも同じ道を辿っているので、そうならないよう努力はしているが、現状は厳しい状況だ。我々が残念と言ってしまうと、保有者やユーザーに怒られてしまうが、周囲の状況を見ていると、頑張っている方ではないかとも思っている。

──流動性が生まれにくい状況にあるのか。

馬場氏:ユーザーの規模が最大の問題だ。これはBrilliantcryptoをはじめ、業界すべてにかかわることとして、大きな問題が4つある。

1つ目は、アプリを作って、リリースすることが難しい。アップルやグーグルなどのプラットフォーマーの規約に触れてしまう可能性が高く、公式のアプリストアに載せてもらうことはできない。

ただし、サイドローディング(公式のアプリストアを介さずに、アプリをインストールする行為)は、かつてはアップルなどのプラットフォーマーは絶対に許さなかったが、今は巨大テック企業を規制する観点から世界的に広がろうとしている。まだ、プラットフォーマー側の抵抗で遅れているものの、ヨーロッパ、アメリカで法整備が進み、日本も「スマホ新法」を実現しようとしている。現状では、スマートフォンにゲームを載せることがほぼ不可能な状況だが、今後に期待したい。

2つ目は、広告規制。我々は上場企業の子会社として規制を遵守して展開しているが、広告が出せない。過去、詐欺的なゲームがあったことが影響しているのだろうが、ブロックチェーンゲームはジャンルとして広告が出せない。つまり、ユーザーを獲得し、ゲームを拡大する手段がない状況だ。その結果、ユーザーが増えないので流動性が生まれず、トークンの価格が下がるというスパイラルになっている。IEO審査を通過した暗号資産には広告規制を緩和するなど業界として働きかけているところだ。

3つ目は、最大の市場であるアメリカがまだ閉じていること。トランプ政権が誕生して、オープンになることを期待している。ゲームで使用するトークンやNFTが証券に該当するという議論があり、少し前はゲーム会社が規制当局から次々と訴えられていた。今はまだ、ユーザーが「アメリカ人」と申告した瞬間にアクセスをシャットダウンする状況だ。現在アメリカで進められている法整備が規制を明確化し、アメリカ市場が本格的に開放されることで、暗号資産市場全体の追い風となることを期待したい。

4つ目は、各国の法律が違いすぎて対応し切れないこと。我々はグローバル展開しているが、きちんとやろうとすればするほど対応は難しくなる。ある国では大丈夫なことも、別の国では「法的に危ないかも」となる。

こうしたことが重なって、どんなに優れたプロジェクトでもなかなか広がらない。これは、やってみて初めて実感した。せめて広告規制は早く解除してほしいと考えている。ジャンルとしてすべて規制するのではなく、個別の審査制にしてもらえれば、きちんと運営しているプロジェクトはしっかりアピールできるようになる。

つまり今、ゲームトークンに流動性が生まれないのは、ユーザー数や規模の問題。規模を拡大する手法はいろいろあるが、その手法がほとんど取れない現実がある。

──ブロックチェーンゲームを手がけるには、かなり難しい状況になっている。

馬場氏:相当な長期スパンで考える必要がある。特に上場企業がブロックチェーンゲームを手がけることはかなり難しい。トークン発行を別の主体が行っているという枠組みで展開するケースもあるようだが、我々のように正攻法で展開することは、もはや不可能ではないかと感じる。上場しておらず、また上場を考えていなければ、リスクを取ってできるかもしれないが、短期的で、怪しげなプロジェクトになってしまいがちだ。

例えば、会計基準をどう考えるかは、会社によってさまざまだが、少なくとも上場を考えるのであれば、我々が作り出した基準に似たものになるはず。その基準は実は、事業者にとっては地獄のような基準で、売上計上はかなり先になる。物品であれば、売れた瞬間に売上が計上できるが、ブロックチェーンゲームの場合、アイテムに資産性があるので、会計的には「3年で按分しましょう」などとなる。1万円で売れても、月々300円にもならない。会計的には「通して見れば同じ」かもしれないが、事業としてはそうではない。月次、年次で売上を作っていかなければならないので、非常に不利だ。

我々に追随する事業者はいないのではないかと感じており、だからこそ、業界団体を通じて規制の整備あるいは緩和を国に訴え、一方で、先駆的立場として頑張っている。

「考え方を変えないと、問いは解けない」

──この先、ブロックチェーンゲームがブレイクするためには、何が必要なのか。

馬場氏:考え方を変えないと、この問いは今は解けないと思っている。我々は今の事態も視野に入れたうえでプロジェクトを設計し、進めている。ブロックチェーンゲームを通じて価値あるものを作り出すことをこの1年でやってきた。このプロジェクトを「今後どうするのか?」については、明確な答えがあり、「終わり方」も視野に入れている。Brilliantcryptoは、宝石が掘り出され、価値あるジュエリーが作られているが、ユーザーも「無限に掘り出されては困る」と言っている。ビットコインは発行上限があるからこそ、高い価値が生まれている。ジュエリーも同じだ。

当初から想定されていたことだが、ゲーム運用単体で収益をあげることは難しい。だが多くのデジタルジュエリーがデジタル空間に生まれている状況であれば、採掘ゲームパートはやめても良い。むしろやめた方が良い。ユーザーにとっても、我々にとっても、どこかでフィナーレを迎え、鉱山の供給を閉じることが、このプロジェクトの正しい姿ではないかと考えている。

つまり、デジタルジュエリーの価値はすぐに上がらなくても、ブロックチェーン上に資産として必ず残っているので、5年後10年後に価値が上がるかもしれない。ビットコインも評価を受けるまでには時間がかかった。おそらく、同じような展開になると考えている。そのためには、我々はどこかで採掘ゲームとしての運用をやめなければならない。

──衝撃的な話だが、ビットコインにインスパイアされて生まれたゲームであることを考えると納得できる。

馬場氏:個人的にはもう少し運用して、他のカラーのダイヤも出したい。リージョン2でイエローダイヤは出したが、できれば、もう1つリージョンを作って、ブルーダイヤやレッドダイヤなども出したい。

ゲーム運用をストップすれば、費用負担はなくなる。一方で我々はファンドを設立して運用しているが、何年後かに価値が上がれば面白いことになる。短期的で従来的なゲームの一形態として見ると難しいが、長期で考えれば夢がある。

「ゲーム運用をやめる」という言い方はユーザーに誤解を与える恐れがあるが、ゲームの成り立ちとして長期的にはそれも視野に入っているという意味だ。掘り出された原石や加工したデジタルジュエリーの価値はブロックチェーンに刻まれており、絶対になくならない。今後、他のチェーンへのインポート機能を提供したり、仮にゲーム運用をやめた後も、我々はサポートとして、デジタルジュエリーの加工ツールやマーケット機能など引き続き提供できる。

──最初の設計から“終わり方”を織り込んであった。いずれ終わらせるゲームを立ち上げる気持ちとは、どんなものなのか。

馬場氏:「価値を残せるという意味で最高の気持ち」と言える。今までのゲームは運営を終了させてしまうと、ユーザーの資産もなくなってしまっていた。だから終わらせることは難しかった。例えば『コロニーな生活』は、位置ゲームの元祖で、コロプラ創業のきっかけとなったゲームだが、まだ続いている。ユーザーが残っている限り、会社が生まれるきっかけとなったゲームを終わらせることはできない。一方、ブロックチェーンゲームは、ゲーム部分の運営が終了しても、生み出された資産は残る。

我々はまだ世の中にないデジタルジュエリーを生み出すためにこのプロジェクトを始めた。ビットコイン、つまり「デジタルゴールド」は存在していたが、デジタルジュエリーはなかった。今では、ユーザーが1個あたり4時間くらいをかけて掘り出したデジタルジュエリーが数多く生まれており、デジタルジュエリーを世に送り出したことにこのプロジェクトの意味がある。

終わらせるからこそ価値があり、永遠

──宝石の価値は、何年後くらいに評価されると考えているのか。

馬場氏:宝石の必要性が生まれないと、価値も生まれない。5年、10年ではダメかもしれない。だがAI時代が本格的に到来し、人間はもう働く必要がなくなって、デジタル空間で遊ぶ時代がやってくる。そうなれば、デジタル空間で人と違ったものを身に付けたいという欲求が生まれるはずだ。そのときに、10年、20年前に掘り出されて、今も存在するデジタルジュエリーがあるらしいとユーザーがその価値に気づくことになる。それを期待している。

10年後、20年後、もしかしたら30年後かもしれない。30年後だと、まだギリギリ生きているだろうから、そういう世界をぜひ見てみたい。ブロックチェーンゲームは、そこまで長期スパンで考えてプロジェクトを実行できるかどうかが鍵になる。

一番の問題は、終わらせ方とタイミングだ。「プロジェクトは赤字で、状況は厳しいのでは?」とよく言われるが、もうこれ以上、掘り出さなくても十分な量のデジタルジュエリーがあり、今後のデジタル空間での需要を賄えるようにしたい。

──需要を賄える宝石の量は、もう目星がついているのか。

馬場氏:もう1つ、リージョンを出したい。検討しているところだ。ゲーム運用を継続させなくても良いゲームだが、あともう1つリージョンをリリースして当初考えていた宝石を全種類出せれば、もう本当に終わりで良いと考えている。ゲーム運用をやめて、宝石ひいてはジュエリーの価値が生まれ、フィナーレを迎えてこそ、このプロジェクトは完遂だと周囲には言っている。終わるけれど永遠、それがBrilliantcryptoだ。

〈コロプラ創業者で、Brilliantcrypto代表取締役の馬場功淳氏、撮影:CoinDesk JAPAN編集部〉

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